インタビュー:北村容子 氏(株式会社きたむら 取締役総帥) × 小串悠人(株式会社日本提携支援)
北村容子 氏(株式会社きたむら 取締役総帥)
東京都北区・赤羽を拠点に、土木建築現場を中心とした交通誘導警備を手がける警備会社「株式会社きたむら」を2005年に創業し、20年来にわたり代表取締役として牽引。 オリンピックをはじめとする大規模イベントでの警備実績もあり、イベント警備や施設警備にも一部対応。 社員数は100名以上。正社員比率が高く、勤怠・給与管理にはクラウドシステムを導入するなど、業界内では珍しいほど整った管理体制を構築。 給与水準や各種手当制度もコンプライアンス重視で設計し、働きやすく持続可能な職場づくりを進めている。 2025年4月にM&Aを通じて経営体制を変革し、現在は取締役総帥として経営に参画中。
HP:https://kitamura-kb.co.jp/
■1:譲渡検討の背景
小串:本日はお時間いただきありがとうございます。まずは、譲渡を検討された背景についてお伺いしてもよろしいですか?
北村様:きっかけは2020年ごろになります。人材関連の課題感や業界の先行き不安など、漠然と「このままではいけないな」と感じていたんです。会社自体はもうすぐ20周年という節目で、私自身もいろいろ考える時期でもありました。
元々会社を設立した当初は、就職氷河期を抜けたあたりで、仕事にあぶれた人が多かったんです。警備業界も今とはまた違って、仕事に困った人を中心に人材が集まりやすくて、なんとかなっていた。でも、少子高齢化や時代の変化とともに、急速に採用が難しくなってきて、人材確保のために人件費が高騰してしまったことも検討する背景の一つとなりました。
小串:人材確保の部分が、大きな負担になってきたということでしょうか?
北村様:そうですね。それに拍車をかけたのが、当時の社内で進めていた方針でした。当社には100名以上の従業員が在籍しておりまして、待遇をより良くしていくために正社員化を進めていこうということで、アルバイトから順次切り替えていったのですが……結果的に、それによって会社全体の運営バランスに一定の見直しが必要な状況が生まれました。
小串:正社員化は業界の中でも早かった取り組みだったと思いますが、結果としては制度的な影響が出てしまったということですね。
北村様:はい。当時は、内部でもさまざまな考えがありましたし、私自身もその中でどういった形が会社にとってベストなのかを模索していました。今振り返ると、複数の視点からより冷静に検証しながら進めていくべきだったと思います。加えて、業界全体としてもやや古い体質が残っていて、DX化が思うように進まず、将来に向けた不安もありました。そうした中で、若い風を取り込んでいく必要があるんじゃないかという気持ちも生まれて、軌道修正の必要性を感じるようになりました。
■2: 日本提携支援に話を聞こうと思った理由と各M&A支援会社の印象
小串:今回、弊社にご相談いただき、約5か月で成約が決まったかと思いますが、最初に我々のサービスを知っていただいた時のことを覚えていらっしゃいますか?
北村様:覚えてますよ。正直、最初は「またM&Aの話か」という感じでしたね。M&Aの話は本当に多くいただくし、どこも似たようなことを言ってくるじゃないですか。でも、その時期がちょうど、将来的な方向性をしっかり考え直す必要があるタイミングで……。だからこそ、「本当に具体的な話であれば、話を聞いてみようか」と思えたんだと思います。
小串:なるほど、ありがとうございます。その時期というのは、経営体制や資本政策を見つめ直す大事なタイミングだったのでしょうか?
北村様:ええ、そうですね。ちょうど、そろそろ本格的に考えなくてはというような状況でした。顧問税理士にも相談してはいたのですが、あまり動いていただけず、なかなか打ち手が見えづらい時期でもありました。だから、「実のある話だったら聞きます」とだけお伝えしましたね。
小串:そこからお話をさせていただき、いくつかのM&A仲介会社をご紹介させていただきましたよね。各社の動きはいかがでしたか?
北村様:皆さん、本当に動きが早かった印象がありますし、どの方も当社の状況に合わせて相手探しを進めていただけました。でも最終的には、こちらの出した条件にマッチした相手を連れてきてくれた上で、クロージングの日程まで逆算して組んだスケジュールを逐一提示していただいた担当者さんの先で進めることになりました。条件を満たす相手を連れてきてくれて、その上で「いつ何をやるのか」が明確になっているのが、安心感につながったのもあるかもしれません。
■3: 買い手企業の印象と決め手
小串:では次に、実際に買い手企業をお探しする際の実体験についてお伺いできればと思います。最終的には現在の買い手企業様とのご縁になりましたが、それまでに複数の提案もあったかと思います。どのような印象を持たれましたか?
北村様:最初に意向表明書をいただいた先は、スキームの面で当社の希望と少し異なる内容だったんですよね。良いお相手さんではありましたが、従業員の雇用や企業文化の継続といった観点で、よりフィットする条件を模索したいという思いが強くなりました。
小串:その後、現在の買い手企業から希望するスキームでの提案が出てきました。印象はいかがでしたか?
北村様:「若い組織だな」というのが第一印象でした。買い手企業の会長さんは、私の息子と同じくらいの世代で、最初は正直驚きました。「この若さでこんなにしっかりしてるのか」と。でも、丁寧で誠実で、何より「一緒にやりましょう」と真正面から向き合ってくれたのが印象的でした。
小串:その中で、信頼関係も自然と深まっていったのですね。
北村様:はい。警備以外にもいろいろな事業を展開されていて、話を聞く中で「いろんなことを本気でやろうとしているんだな」という姿勢が伝わってきましたし、将来の可能性を感じる部分が大きかったです。
小串:なるほど。逆に、大手の警備会社なども候補として検討されていたと思いますが、比較してどんな違いを感じられましたか?
北村様:大手さんはやはり規模も実績もありますし、安定感はありました。ただ、組織が確立されているぶん、型にはめたようなアプローチになる部分も感じられて。当社はまだ整理すべきことが多い段階でしたので、もう少し柔軟に対応してくれるパートナーの方が合っているなと感じていました。
小串:だからこそ、最終的な買い手企業の柔軟さや親身な姿勢が決め手になったと。
北村様:そうですね。警備業という業界自体が少し古い体質の残る部分もあって、それが私にとっては長年の課題でもありました。だからこそ、新しい風を取り込むという意味でも、「世代交代」や新たな価値観を取り入れる機会になるんじゃないかという期待が強かったんです。それが今回の決断の大きな理由になりました。
■4:譲渡後の会社・経営者・従業員の姿
小串:譲渡後、実際に会社の中ではどんな変化がありましたか?北村社長ご自身の働き方や、社員の皆さんの反応も含めてお聞かせいただけますか?
北村様:正直なところ、日々の業務はそこまで変わってないですね(笑)。でも、精神的には全然違います。今までは私ともう1人の女性役員の2人で、すべてを決めていかなくてはならなくて、相談相手もいなかった。でも今では、会長と一緒に考えられるし、社内だけで抱え込まなくて済むようになった。しかも、会長は私たちのやり方を尊重してくれるんですよ。
小串:経営の自由度についても、ある程度維持されているのでしょうか?
北村様:はい、そこは驚くほどです。譲渡時に一度は会社の通帳などもお渡ししましたが、「今まで通り使ってください」とすぐに返してくださって。もちろん、大きな支出があるときにはお伺いを立てますけど、それ以外は本当に任せてもらっています。
小串:それは安心できますね。社員の皆さんへの説明やフォローもされていたと伺いました。
北村様:はい、社員説明会もちゃんと開いて、会長からも直接経緯を話してもらいました。その場で「騙された」とか「裏切られた」と感じた社員はいなかったと思います。今でも誰一人「不安だから辞めます」と言ってくる人はいません。
小串:給与体系や待遇面での変更などはありましたか?
北村様:ありました。全体的に見直しをして、基本給は4月に一部引き上げました。また、生活支援として社内貸付制度を新たに導入したんです。
小串:社内貸付制度ですか。それは社員さんにとってもありがたいですね。
北村様:そうなんです。うちの業界は、どうしてもお金に困る方が一定数いるんですよ。でもそういう人たちに、利息つきでも会社から貸してあげる仕組みを作れば、変なところから借金するリスクも減らせる。しかも利息分は会社の利益にもなるし、その利益はまた社員に還元できる。いい循環になるんじゃないかと思ってます。
小串:従業員をしっかり守りながら、持続可能な形を作っていくということですね。
北村様:そうです。今までは「どうにかするために今月も何とか乗り切ろう」と毎月が戦いでした。でも今は、ちゃんと未来に向けた設計ができるようになった。これは大きな変化です。
■5:日本提携支援を薦めたい相手・サービスの良かった点 & 追加してほしいサービス
小串:最後に、日本提携支援のサービスについてお伺いしたいのですが、今回ご利用いただいて、特に「助かったな」と思われた点はどんなところでしたか?
北村様:やっぱり最初の“つなぎ”の部分ですね。正直、テレアポやDMが山ほど来る中で、誰がどの会社で、何を提案してくれてるのか、もう頭が混乱していて。でも御社は、そういった情報をちゃんと整理して、段取りを組んでくれた。それが一番ありがたかったです。
小串:確かに、我々の立場としても仲介会社ではないので、客観的にご紹介しつつ、間を整理するという役割を意識しています。
北村様:まさにそれがちょうどよかったです。紹介してもらった仲介会社の誰がどういう視点で、どういう提案をしてくれるのか、1人で比べるのって本当に難しいですから。自分で判断できない部分を、一緒に並走してくれたような感じがして心強かったです。
小串:ありがとうございます。実際にご紹介した仲介会社さんの違いをどう感じられましたか?
北村様:皆さん、それぞれ良かったと思います。正直、時間的な制約があったのもあるので、可能であれば「もっと見て回れたらよかったな」とは思いましたけど、今思えば一番最適な形で進めてもらえたなと思っています。選択肢は限られていたけど、結果的にベストなご縁をいただけました。
小串:ありがとうございます。ちなみに「こんな機能があったらもっと良かったな」と思うことはありましたか?
北村様:いや、特にないですね。もう十分にやっていただいたと思ってます。あの時期にあれだけ手厚く動いていただけたのは、今思い返してもすごいことだったと思います。
小串:恐縮です。では最後に、今まさにM&Aを考えている、あるいは悩んでいる経営者の方々に向けて、北村社長のご経験を踏まえて、一言メッセージをいただけますか?
北村様:そうですね……。やっぱり、本当の意味で「余裕のある会社」って、M&Aのことなんてあまり考えないと思うんです。私もそうだったし、悩んでるってことは、もうすでに組織の体質や自社単独での成長限界だったり、何かしら限界が近づいている証拠だと思うんです。
小串:なるほど、その“迷っている状態”自体が、実は大事なサインだと。
北村様:そうです。私も実は3〜4年前に一度検討したことがあったのですが、そのときは社内の事情もあって話が進まず、結局見送ることになってしまった。でも、あの時に動いていれば、もっと余裕を持って選択肢を検討できたかもしれないな、と今では思います。
小串:たとえ成約に至らなかったとしても、得られるものがあると。
北村様:絶対ありますよ。買い手候補企業との面談を通していろんな会社のやり方や給与体系、経営の考え方を知るだけでも勉強になります。私自身も、話してみたら元々知っていた会社だったってこともありましたが、その会社さんからはM&A成約後に「無事に成約が決まって良かったですね」と暖かい声をかけていただきました。
小串:ありがとうございます。そうしたご経験を踏まえても、「動くなら早い方がいい」と。
北村様:はい。悩んでいるうちが動きどきだと思います。早く動けば、選べる選択肢も多いし、結果的により納得のいく決断ができると思います。今回、私は本当にいいご縁をいただけたと思ってますし、組織に新しい風を吹かせる形になった、それが何より嬉しいです。
【活用いただいた当社サービスはこちら】
■M&Aオファー
事業承継や売却を検討する経営者様が、一度の登録で60社以上のM&A支援会社からオファーを受け取れるプラットフォームです。
経営者様は自社の条件に合った提案を比較し、ご自身のタイミングで、最適なM&Aパートナーを選定できます。
中小M&Aガイドライン(第三版)を踏まえた日本初のサービスで、公平性と透明性を重視。
登録は無料で、契約期間の制限もなく、経営者のペースで進められます。
詳しくはこちら
【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社日本提携支援
窓口:齋藤あきむ(事業開発・広報担当)
TEL:03-6455-2940
MAIL:info@nihon-teikei.com
HP:https://nihon-teikei.co.jp/