
監修者
株式会社日本提携支援 代表取締役
大野 駿介
過去1,000件超のM&A相談、50件超のアドバイザリー契約、15組超のM&A成約組数を担当。
(株)日本M&Aセンターにて、年間最多アドバイザリー契約受賞経験あり。
新規提携先の開拓やマネジメント経験を経て、(株)日本提携支援を設立。
現在、飲食業界はコロナ禍からのV字回復期にある一方で、深刻な人手不足や原材料費の高騰、さらには後継者問題といった複合的な課題に直面しています。このような状況下で、事業の継続や拡大、あるいは経営者の新たな一歩として「飲食店 M&A」が注目を集めています。単なる事業売買に留まらず、M&A(企業の合併・買収)は、店舗のブランドを次世代へ引き継ぎ、新たな価値を創造するための重要な経営戦略へと進化しているのです。
このコラムでは、M&Aがなぜ今、飲食店経営者にとって重要な選択肢となっているのか、その市場背景から具体的な成功への道筋、NTS(株式会社日本提携支援)が現場で培ってきた独自の知見とともにお伝えします。初めてM&Aをご検討される方にも分かりやすく、専門用語も丁寧に解説しながら、貴社の未来を拓くための具体的なヒントを提供することを目指しています。
本稿では、M&Aがなぜ今、飲食店経営者にとって重要な選択肢となっているのか、その市場背景から具体的な成功への道筋まで、私たちNTS(株式会社日本提携支援)が現場で培ってきた独自の知見とともにお伝えします。初めてM&Aをご検討される方も、専門用語を丁寧に解説しながら、貴社の未来を拓くための具体的なヒントを提供することを目指します。
飲食店M&Aが今、注目される理由:市場の背景と事業承継の課題
飲食業界では、これまで親族内承継が主流でしたが、現代ではその形が大きく変化しています。経営者の高齢化と後継者不在の問題は、業界全体が直面する喫緊の課題です。中小企業庁の発表によると、全国の中小企業経営者の平均年齢は上昇の一途を辿り、約6割が60歳以上というデータもあります。これは、多くの飲食店経営者が事業承継のタイミングを迎えていることを示唆しています。
1-1. コロナ禍後の回復期における事業再編の動き
新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた飲食業界は、近年、力強い回復を見せています。しかし、その過程で、経営環境に適応できなかった事業者が撤退を余儀なくされた一方で、新たな経営戦略を模索し、事業規模の拡大や多角化を図る動きも活発化しています。M&Aは、こうした事業再編の中で、効率的な事業再生や成長加速のための有効な手段として認識され始めています。特に、単独での新規出店に比べて、既存の顧客基盤や優秀な人材、確立されたブランドを一度に獲得できるM&Aのメリットは、多大な時間とコストを要する飲食業界において計り知れません。
NTSが支援したあるケースでは、コロナ禍で一時的に売上が落ち込んだものの、地域からの支持が厚い老舗店舗がありました。私たちは、この店舗が持つ顧客基盤とスタッフの育成ノウハウを高く評価する買い手企業と提携を支援。新たな運営会社の傘下に入ることで経営資源を効率的に活用し、短期間で事業を立て直し、売上を回復させた事例があります。
1-2. 慢性的な人手不足と後継者問題
飲食業界の長年の課題である人手不足は、事業継続に深刻な影響を与えています。厚生労働省の統計でも、飲食サービス業の有効求人倍率は常に高水準で推移しており、人材の確保が極めて困難な状況です。これに加え、親族内に後継者がいない、あるいは子息が別業界に進むことを希望するといった「後継者問題」は、多くのオーナー経営者が頭を抱える問題です。
NTSに寄せられる相談の中にも、「長年育ててきた店を閉めたくないが、体力も限界で後継者も見つからない」といった切実な声が数多く聞かれます。M&Aは、こうした状況を打開し、愛着ある店舗や従業員の雇用を守りながら、第三者へ事業を引き継ぐ「出口戦略」として機能します。買い手側にとっても、優秀な従業員を確保できることは大きな魅力となり、人手不足解消の一助となる可能性を秘めているのです。
1-3. 成長戦略としてのM&Aの選択肢
M&Aは、単に事業承継の手段に留まらず、企業が成長するための戦略的な選択肢としても注目されています。買い手側にとっては、既存のブランド力や特定の地域での市場シェア、熟練した職人技を持つ人材などを獲得することで、自社の競争力を飛躍的に向上させることが可能です。例えば、異なる業態の飲食店を買収することで事業ポートフォリオを多様化し、リスク分散や顧客層の拡大を図るケースや、複数の店舗を買収してスケールメリットを追求するケースなどが挙げられます。
NTSでは、このような成長戦略の一環としてのM&Aについても、買い手企業様の事業計画を深く理解し、最適な対象企業の探索から成約までを一貫してサポートしています。私たちは、M&Aを単なる取引ではなく、企業価値を最大化する「提携支援」と捉え、長期的な視点での成長を見据えたご提案を心がけています。
2. 飲食店M&Aを成功させるための具体的なステップ
M&Aは、複雑なプロセスを伴うため、成功のためには計画的な準備と専門家のサポートが不可欠です。ここでは、飲食店M&Aを検討する上で押さえておくべき主要なステップをご紹介します。
2-1. M&Aの準備:自社の「強み」と「課題」の明確化
M&Aプロセスに入る前に、まず自社の事業内容、財務状況、組織体制を客観的に評価することが重要です。特に飲食店の場合、立地、ブランドイメージ、メニューの独自性、顧客層、従業員のスキル、取引先との関係性、そして収益性といった要素が評価の対象となります。これらの「強み」は売却価格を高める要因となり、「課題」は買い手にとってのリスクとして認識される可能性があるため、事前に把握し、可能な限り改善策を講じておくことが望ましいでしょう。
NTSの現場では、この自己評価の段階から、経営者の方々と密にコミュニケーションを取り、第三者の視点から事業の潜在的な価値を見出すお手伝いをしています。例えば、ある地域密着型の飲食店オーナーは、ご自身の店舗が持つ「長年の常連客による安定した集客力」や「地元食材を活かした独自メニュー」を改めて認識し、それがM&A交渉において高く評価される強みとなりました。私たちは、貴社の魅力を最大限に引き出し、買い手候補に伝えるための魅力的な資料作成支援も行っています。
2-2. 専門家との連携:M&A仲介会社選びの重要性
M&Aは専門的な知識と経験を要するため、信頼できるM&A仲介会社との連携が成功の鍵を握ります。仲介会社は、適切な買い手候補の探索、交渉戦略の立案、デューデリジェンス(DD:企業調査)や契約書の作成支援、クロージング(取引完了)まで、全プロセスをサポートします。
M&A仲介会社を選ぶ際は、飲食業界における実績、提供するサポート範囲、料金体系、そして担当アドバイザーとの相性などを総合的に判断することが重要です。NTSでは、地方自治体との連携協定実績や600件以上の豊富な相談実績を通じて、幅広い業界の中小企業のM&Aを支援してまいりました。私たちは、単に取引を仲介するだけでなく、経営者の皆様の想いに寄り添い、M&A後の事業の発展までを見据えたきめ細やかなサポートを提供することを強みとしています。特に飲食店M&Aにおいては、営業許可の引き継ぎや従業員の雇用継続といった、業界特有の複雑な課題にも精通したアドバイザーが対応いたします。
デューデリジェンス(DD)とバリュエーション(企業評価)のポイント
M&Aのプロセスにおいて、買い手側は対象企業の事業内容や財務状況を詳細に調査するデューデリジェンス(DD)を行います。飲食店の場合、財務・税務DDに加え、店舗の設備状況、衛生管理体制、許認可の状況、賃貸借契約の内容、主要な仕入れ先との契約条件、そして従業員の労働契約などが詳細に調査されます。
また、対象企業の企業価値を算定するバリュエーションも重要なステップです。飲食店のバリュエーションでは、DCF法(Discounted Cash Flow法:将来のキャッシュフローを割引いて企業価値を算出する方法)や類似会社比較法、純資産法など複数の評価手法が用いられますが、特にキャッシュフローの安定性、ブランド力、将来の成長性、そして特定の立地が持つ価値などが重視されます。NTSでは、これらの専門的なプロセスにおいて、経営者の皆様が不利な条件で交渉を進めることのないよう、徹底したサポートを提供しています。適切な企業評価は、後悔のないM&Aを実現するための基盤となるでしょう。
3. 飲食店M&Aにおける独自の留意点とリスク管理
飲食店M&Aには、一般のM&Aとは異なる業界固有の留意点がいくつか存在します。これらを事前に理解し、適切なリスク管理を行うことが成功には不可欠です。
3-1. ブランド力と顧客基盤の評価
飲食店のM&Aにおいて、店舗のブランド力や長年培ってきた顧客基盤は、無形資産として非常に高い価値を持ちます。特定のシェフやサービススタッフが築き上げてきた評判、SNSでの評価、メディア露出などもブランド力に寄与します。しかし、これらの無形資産は数値化が難しく、評価が曖昧になりがちです。
NTSでは、定性的な要素であるブランド力を客観的に評価するため、来店客数、リピート率、客単価、顧客満足度調査の結果、SNSのフォロワー数やエンゲージメント率など、多角的なデータに基づいて分析を行います。実際の現場では、数字には表れない「店舗の雰囲気」や「コンセプトの魅力」が、買い手にとっての大きな魅力となることも少なくありません。私たちは、こうした目に見えない価値を適切に言語化し、M&A交渉で有利に進めるための支援を行っています。
3-2. 従業員の引き継ぎと組織文化の融合(PMIの視点)
M&A後の円滑な事業継続には、従業員の引き継ぎと組織文化の融合が極めて重要です。特に飲食業では、従業員のスキルや経験、顧客との人間関係が事業の中核をなすため、彼らの離職は事業価値を大きく損ねるリスクがあります。
私たちは、M&A後の統合プロセス(PMI:Post Merger Integration)を重視し、従業員への情報開示のタイミングや伝え方、新しい雇用条件の提示などについて、売買双方の経営者と綿密に連携し、トラブルを未然に防ぐためのアドバイスを行います。NTSが支援したある飲食店のM&A事例では、買収後も旧経営者が一定期間店舗に残り、従業員や常連客との橋渡し役を担うことで、スムーズな引き継ぎと組織文化の融合を実現しました。M&Aは従業員にとっても大きな変化であるため、不安を解消し、モチベーションを維持するための配慮が不可欠なのです。
3-3. 許認可と衛生管理のリスク
飲食店の経営には、食品衛生法に基づく営業許可をはじめ、酒類販売許可、深夜酒類提供飲食店営業許可など、さまざまな許認可が必要です。M&Aの際には、これらの許認可がスムーズに買い手へ引き継がれるか、あるいは新たに取得が必要となるかを事前に確認し、スケジュールに含める必要があります。
また、衛生管理の状況も重要なチェックポイントです。過去の食中毒や衛生管理上の問題は、買い手にとって大きなリスクとなり、ブランドイメージの毀損や行政指導につながる可能性があります。NTSでは、デューデリジェンスの段階で、これらの許認可や衛生管理体制について徹底的な調査を行い、潜在的なリスクを洗い出すサポートをしています。
3-4. 賃貸借契約の引き継ぎ
多くの飲食店は、店舗を賃貸契約で運営しています。M&Aに際しては、現行の賃貸借契約が買い手へとスムーズに引き継げるか、あるいは新規に契約し直す必要があるのかを確認することが必須です。賃貸借契約の条件(賃料、保証金、契約期間、名義変更の可否など)は、M&A後の事業運営に直結するため、非常に重要な要素となります。
特に、契約内容によっては名義変更にオーナーの承諾が必要な場合や、保証金の追加要求、賃料の値上げなどが生じる可能性もあります。NTSでは、このような不動産関連の契約についても詳細に確認し、買い手側が安心して事業を開始できるよう、契約条件の調整交渉を含めて支援いたします。
4. NTSが支援した飲食店のM&A事例から学ぶ成功の秘訣
NTSでは、様々な背景を持つ飲食店経営者様からM&Aのご相談をいただき、その実現を支援してまいりました。私たちは、単にM&Aを成立させるだけでなく、売却側・買収側の双方が長期的に満足できる「提携支援」を目指しています。
NTSが支援したあるケースでは、後継者不在に悩む個人経営の老舗洋食店がありました。店主は長年の常連客が多く、従業員も大切にしたいという強い想いをお持ちでした。私たちは、この店舗の「地域に根差したブランド力」と「熟練した料理人の存在」という強みを最大限に評価し、多店舗展開を目指すある企業に買収をご提案しました。結果として、買収側の企業は新たなブランドを立ち上げる手間を省き、即座に安定した顧客基盤と技術を獲得。売却側の店主は、愛着ある店舗と従業員が守られ、長年の夢だった海外旅行へと旅立つことができました。
別の事例では、特定の地域に集中して店舗展開をしていた飲食店チェーンの買収を支援しました。買い手側は、全国展開を目指す大手飲食グループで、特定の地域におけるドミナント戦略(地域集中出店戦略)を強化したいと考えていました。私たちは、そのチェーンが持つ「効率的な店舗運営ノウハウ」と「地域住民からの高い支持」を高く評価しました。買収側は、短期間で新たな地域市場への参入とシェア拡大に成功し、売却側は、経営資源を集中させることで、より専門性の高い事業領域での成長戦略を描くことができました。
これらの事例から、飲食店M&Aの成功には、以下の要素が共通して見られます。
- 事業の強みと潜在的な価値を明確に言語化できること。
- 従業員の雇用維持や処遇改善に配慮し、PMIを意識した交渉を行うこと。
- 買い手側が事業の成長戦略を描けるような具体的なプランを提示できること。
- 業界特有の許認可や契約関係のリスクを事前に洗い出し、対策を講じること。
NTSは、これらの成功要因を熟知しており、一つ一つのM&A案件に対してオーダーメイドの戦略を立案しています。私たちは、地方自治体との連携協定実績や600件以上の豊富な相談実績を通じて培ってきたノウハウを活かし、経営者の皆様のM&Aを力強くサポートいたします。
