インタビュー:吉田 太一 様(ロードメンテナンス株式会社/佐賀県)
吉田 太一 様
ロードメンテナンス株式会社 代表取締役。26歳で社長を承継し、弟と二人の体制から会社を拡大。「業界で一番を取る」を目標に掲げ、建設業の経営事項審査において佐賀県内1位を2期連続で獲得。交通安全施設工事を軸に、地域の安全を支える事業を約30年にわたり率いる。
26歳で社長を承継し、弟と二人の小さな会社から、経営事項審査で佐賀県内1位へ。目標を達成した経営者が次に選んだのは、「自分一人に依存しない形で、社員の雇用と会社の未来を確保する」という道でした。
交通安全施設という、地域から一日も止められないインフラを担うロードメンテナンス株式会社。その代表取締役である吉田太一様は、約5年をかけて検討を重ねたうえでM&Aに踏み切りました。ここに至るまでに何を考え、どこで迷い、なぜ「間に立つ相談相手」を必要としたのか。決断のプロセスを、率直に語っていただきました。
■「県内1位」を達成した先に見えた、自分のゴール
— まず、M&Aを考え始めた背景から教えてください。
吉田様:はい。実はM&Aについては、5年くらい前からうっすら考えていました。ただ、決定的だったのは目標を達成してしまったことなんです。建設業には経営事項審査という仕組みがあって、私はその点数で佐賀県内1位を取ることを目標に据えて経営してきました。26歳で社長を継いだときは、弟と二人だけの小さな会社でした。そこから県内一番を目指して、2期連続で1位を獲ることができた。ここが社長としての一つのゴールだな、と思いました。
その先に九州展開という絵も描いてはいたんです。ただ、自分の能力ではまだ時間がかかる。年齢も50代半ばに差しかかる中で、あと10年で到達できるのかと考えたときに、「ここが自分のゴールだ」と結論が出てM&Aを進めることを決断しました。
— 社内から後継者を、という選択肢はいかがでしたか。
吉田様:本音を言えば、社内から出したかったです。ただ、外交面の課題をクリアできる人材を育てられていませんでした。実務は非常にできる社員が揃っているのですが、会合など対外的な場が苦手なタイプがたまたま多かった。そこは私の育成の責任でもあります。
一番気にしていたのは、「自分が病気や怪我をしたとき、この会社の運営を誰がするのか」という点でした。資金面は当面の心配はありません。でも、30代の社員たちが安心して働ける環境をつくることが、会社のテーマだったんです。大手グループの一員になれば、人事面も含めて社員が安心できる体制がつくれる。
ここから先の成長は、それを実現していただける会社さんにお願いした方がいいんじゃなかろうか。それがM&Aを考えた一番最初のきっかけです。
■毎日届くDM。「直接相談するのは、怖い」
— 相談先はどのように探されましたか。
吉田様:最初に想定したのは銀行や証券会社でした。ただ実際には、周囲でM&Aに携わった経験のある方――元証券マンの知人にまず相談し、そのご紹介で株式会社日本提携支援につながった、というのが実際の経路です。
— 大手のM&A仲介会社からの接触もあったのでしょうか。
吉田様:ありました。会社にも個人宅にも、毎日のようにDMやメールが届きます。「買い手がいて、あとはこちらの返事待ちです」といった形で接触してくる手法は、どこも同じでした。正直、そういう先に直接相談するのは怖いと感じましたね。
それに佐賀の小さな建設会社を、多少売上や利益があるとはいえ、本当に欲しがるところがあるのかという先入観も自分の中にありました。ただ、一番はやはり、騙されたくないということ。だからこそ知人や経験者の方に相談するのが一番かなと思いました。
■決め手は「途中に入って相談できる人がいる」という構図
— 日本提携支援の第一印象はいかがでしたか。
吉田様:日本提携支援の大野社長から「ほけんの窓口のM&A版のようなサービスです」と説明を受けました。知人からのご紹介という経路でしたから、抵抗なく受け入れることができましたね。
日本提携支援から2社のM&A仲介会社をご紹介いただき、最終的にはそのうちの1社と、別ルートで接点のあった大手M&A仲介会社の2社で検討しました。
— 最終的に、決め手になったのはどこでしょうか。
吉田様:大手は実績が業界随一だと認識していました。一方、日本提携支援にご紹介いただいた仲介会社は、担当者が若くて熱意があり、提案力もありました。また規模が小さい分、小回りが利いて、泥臭く誠実に対応してくれるのではないかと感じた。あわせて、その会社の評判をインターネット等で徹底的に調べて、評判も良く、紳士的な会社だと見て取れたことも大きかったです。
そして決め手は、日本提携支援を経由することで「途中に入って相談できる人がいる」という構図になったことです。直接大手仲介と契約してしまえば、関係者は仲介会社・自分・買い手の三者だけになってしまいますから。
M&A業界の常識は、僕らの常識ではないことがあります。そうなったときに相談できる人がいるかどうかは、本当に大きかったです。
■検討が長引くほど募る不安。支えになった伴走者の存在
— 実際に進める中で、想定外だったことはありますか。
吉田様:検討期間が長くなるほど、不安は大きくなりました。自分の会社でありながら「売りに出している会社」になる。宙ぶらりんな状態で、下手なことができない。どこまでやってよいのかが、だんだん分からなくなってくるんです。
お相手が大手企業ということもあり、規模に見合った当然の手続きですが、デューデリジェンス(買収監査)は相当大変でした。初めてのM&Aで、相談できる存在がないまま一人で向き合っていたら、途中で心が折れて「もうやめよう」となっていたと思います。日本提携支援に相談できたからこそ、踏みとどまれました。
— 条件面で立ち止まった場面もあったと伺いました。
吉田様:2回ほどありました。どちらも、私自身が納得しきれずに立ち止まった場面です。それでも仲介会社は、最後まで強引な手法を取らなかった。「吉田さんのお考えで大丈夫です。徒に契約しないでください。すべて納得したうえで進めてください」というスタンスを貫いてくれました。
— 最も印象に残っている場面は。
吉田様:クロージング当日です。最終契約書に押印して、着金の確認を待つ10~15分。あの時間に、これまでの経緯が走馬灯のように思い返されました。
最初に仲介会社をどちらにするか、あの扉のどちらを開けたかで、今のこの状態はなかったよなと。日本提携支援に頼んでよかったと、その15分のあいだ、思っていました。
■「自分だけがド素人」の不安を埋める、壁打ち相手
— 日本提携支援のサポートについて、ありがたかった点を挙げるとすれば。
吉田様:中立的な立場で壁打ち相手になって、売り手社長に寄り添ってくれることです。ここが最もありがたかった点ですね。買い手は事業会社やファンドでM&Aに慣れていますし、仲介会社も当然慣れている。売り手の社長だけが未経験で、「自分だけがド素人」という立ち位置になるんです。だから不安が募る。私の場合は、元証券マンの知人や日本提携支援に相談し、そこから仲介会社へ報告、会計士へ報告というスタンスが取れたので、不安をかなり解消できました。
— 具体的には、どのような場面で助けになりましたか。
吉田様:間違った判断はしたくないし、お相手には誠実に、正確にお伝えしたい。そこで経験豊富な日本提携支援メンバーの助言を、一度自分の中で消化してから相手に伝えられた。これが非常に大切でした。
あとは、万一M&A仲介会社とのやり取りが滞るようなことがあっても、紹介元である日本提携支援から確認を入れてもらえる。その安心感、牽制機能にも価値があると思います。仲介の「一つ前」にあたるこの仕事は本当に大切で、他にやっている方が少ないことがむしろ不思議なくらいです。今後M&Aは確実に増えますから、もっと広く知られるべき役割だと思います。
日本提携支援の立ち位置のお仕事は、売り手の社長さんたちからするとすごく重宝される仕事だと思います。
■譲渡後1週間、社員一人ひとりと向き合った
— 譲渡後の社内の変化はいかがですか。
吉田様:社員は当初、非常に不安がっていました。ですから譲渡直後の1週間は、終業後の17時から18時頃にかけて、社員一人ひとりと向き合って、誤解が生じないよう丁寧に説明を重ねました。それもあってか、現在も全員が「これから頑張っていく」という姿勢で取り組んでくれています。
— ご自身の心境は。
吉田様:正直、まだ複雑な部分は多くあります。一方で、肩の荷が下りたという実感も確かにある。今は後任社長への引継ぎが主な仕事です。30年近く育ててきた会社ですから、お譲りしたと頭では理解していても、感情が追いつかない。それでも、社員の雇用と会社の存続・発展を、自分一人に依存しない形で確保できた。そこがM&Aをして良かった点だと思っています。彼らの明るい未来が少しでも見えたらいい。10年後に大きくなった会社を見ることができたら、僕はそこで一番の成功を感じられるのだと思います。
■仲介会社は、手数料率で選んではいけない
— 仲介会社選びについてアドバイスがあればお願いします。
吉田様:手数料率だけで選ぶべきではない、というのが一番です。不動産の売買と違って、M&Aは仲介会社が「相手(会社)」を連れてこなければ成立しない。安い手数料でも、お粗末な相手しか来なければトータルではプラスになりません。
また、必ず一度は対面で会ってから契約することをお勧めします。その後の打ち合わせはWeb会議で問題ありませんが、最初からオンラインだけでは判断が難しい。あわせて、評判は必ず調べること。私自身も、契約前にインターネットで徹底的に調べました。
■決算書は、経営者の通知表
— 最後に、同じ悩みを持つオーナー経営者へメッセージをお願いします。
吉田様:M&Aは、思い立ってポンとやるものではありません。私自身も約5年前からM&Aを想定して、さまざまな取り組みを行ってきました。
決算書をしっかり作り込むことに加えて、労務や法務を整えたうえで引き継ぐこと。それが最終的には評価にもつながります。中小企業では会社と個人の財布が一緒になっている先も多いですが、相手から見れば判断材料は決算書しかない。口でどれだけ良い会社だと言っても、決算書が悪ければ見向きもされないんです。決算書は経営者の「通知表」です。
直前だけ整えることは可能かもしれませんが、最低5年は整えておかないと良い相手は来てくれません。5年やり切れば労務も整い、コンプライアンス上の課題もクリアされてきます。情勢が変わったからと急にM&Aに動く社長も多いですが、前もっての準備が不可欠です。
裏を返せば、最低5年準備しておけば、たとえM&Aをしなかったとしても、その会社は必ずいい会社になっているはずです。
編集後記:成功を引き寄せる鉄則
吉田様のインタビューから見えたのは、M&Aを「出口」ではなく、経営の延長線上にある一つの到達点として設計してきた経営者の姿でした。
- 仲介会社・買い手・自分の三者だけにしない。間に立って相談できる存在を持つ
- 手数料率ではなく、「どんな相手を連れてこられるか」で仲介会社を選ぶ
- オンラインだけで決めない。一度は対面で会い、評判を調べてから契約する
- 5年前から「決算書・労務・法務」を整える。準備そのものが会社を良くする
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